今回は「高尿酸血症」と「痛風」について。
(1)尿酸とはどんなもの?
尿酸は、私たちの体の中に常に存在しており、つくれる量と体の外に出される量は通常は一定に保たれています。尿酸の材料になるのが「プリン体」で、「プリン体」は体の中の新陳代謝やエネルギー消費でつくられたり、食事により体に取り入れられています。尿酸はプリン体を代謝した結果生じる老廃物(燃えカス)なのです。血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されます。高尿酸血症が長い間続くと、尿結晶が徐々に沈着していき、痛風発作(関節炎)や尿路結石、腎障害などが引き起こされます。
(2)痛風とは?
痛風発作はある日突然に始まります。足の親指のつけ根の関節などに起きやすく、耐えられないほどの激烈な痛みとともに、関節が大きく腫れあがります。
尿酸の結晶がただ沈着しているだけでは痛風発作は起こりません。発作が起こるのは、心身に大きなストレスをともなう動作や運動、急激な尿酸値の変動などがきっかけとなり、関節に付着していた結晶が剥がれ落ちたときです。この様子を木に降り積もる雪にたとえて表現すると、図のようになります。尿酸値が7.0mg/dLを超えると小雪が降りだし、尿酸値が高くなるに従って激しく降るようになり、木の枝に雪がどんどん積もっていきます。ついには、積もった雪が枝から崩れ落ち、痛風発作が発生するのです。
激しい痛みの原因は、剥がれ落ちた結晶を白血球が異物と認識して排除するために起きる炎症反応であり、痛風発作そのものは1週間〜10日程度で治まります。
発作が治まると痛みが嘘のように消えるため、治療を止めてしまったり、そのまま放置してしまうこともありがちです。しかし、痛風の原因である尿酸値が高い状態や関節に尿酸が沈着している状態を治療せずに放っておくと、発作を繰り返すだけではなく、さまざまな合併症を引き起こす原因になります。最近ではメタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を合併しやすいこともわかってきました。
(3)高尿酸血症と痛風の治療は?
第1段階:痛風発作を抑える対症療法
痛風発作時には、関節の炎症と痛みを和らげる消炎鎮痛剤を短期間使います。また、尿酸値を下げる薬の飲み始めや、痛風発作の予兆があるときに、コルヒチンという発作を抑える薬も飲むこともあります。
第2段階:血清尿酸値を下げる原因療法
痛風発作がおさまったら、尿酸値を下げる薬物療法を開始します。体の中で尿酸をできにくくする薬と尿の中へ尿酸を追い出しやすくする薬があります。この種の薬は発作の有無にかかわらず相当長期間、場合によっては一生飲み続ける必要があります。痛風発作がなくても、血清尿酸値が8mg/dl以上で合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなど)がある場合、9mg/dl以上ある場合は薬物療法の対象になります。
第3段階:合併症を予防する健康管理
総カロリーの制限が最も大事です。(まず野菜からゆっくり食べる、腹八分目に抑える。)また、プリン体を多く含む食品やビールを控えることや、海藻や野菜などアルカリ性食品と水分を十分取るよう心がけてください。(尿が酸性に傾いていると尿の中の尿酸が溶けにくくなり、尿路結石ができやすくなります。)日常生活に運動を取り入れたりするなどセルフケアにより重大な合併症の発病を予防しましょう。痛風は痛風発作のとき以外は無症状なので、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」患者さんが多く、治療を中断されることがよくあります。尿酸値を正常に維持し続けることで、木の枝に積もった尿酸の雪がゆっくり溶けるのです。病気を理解して生涯治療に取り組んでください。
次回は、慢性腎臓病(CKD)についてです。