骨粗鬆(こつそしょう)症とは、骨の量が減り、骨がもろくなる病気です。閉経後の女性や高齢者に多く、我が国では近年の急速な高齢化に伴い、患者数は約1300万人と推定されています。
しかし、骨がもろくなるのは「老化」と考え、予防や治療を行わずに放置する場合が非常に多いとも言われています。骨粗鬆症を放置すると骨折の危険性が高まり、高齢者では骨折から寝たきりへとつながってしまうこともあります。健康な骨には、網目状の構造をした骨梁(こつりょう)がぎっしり詰まっています。ところが、骨粗鬆症になるとこの骨梁が細くなったりおれたりして、スカスカでもろい骨になってしまいます。
骨粗鬆症の方は、くしゃみや布団の上げ下ろしなどの日常動作、転んだ時の衝撃などで簡単に骨折することがあります。特に骨折しやすいのは背骨、手首、太ももの付け根の3箇所です。中でも大腿骨頚部(太ももの付け根)の骨折は年々増加していて、寝たきりになる原因の一つです。
(1)骨粗鬆症の症状は?
立ち上がる時や重い物を持つ時に背中や腰が痛む、背中を下にして眠りにくい、ささいなことで骨折した、身長が縮んだ、背中や腰が曲がってきた、などが主な症状です。
骨粗鬆症による骨折では、はっきりした症状がない場合があります。年をとれば誰でも思い当たることはありそうですが、実はこうした症状の影には骨粗鬆症が隠れていることが多いのです。こんな症状があったら一度検査を受けてみましょう。
(2)骨粗鬆症の診断は?
超音波やレントゲン検査で骨量を測定し、骨粗鬆症かどうかを診断します。その診断は、若年成人(20〜44歳)の骨量の平均値(YAM値)との比較によって行います。骨量がYAM値の70%未満であれば骨粗鬆症、70〜80%であれば骨量減少と判断されます。骨量がYAM値の80%未満の人は注意が必要です。
(3)骨粗鬆症の予防や治療は?
(1)食事について
骨粗鬆症を予防するためにも、治していくためにも、カルシウムとカルシウムの吸収を助けるビタミンDを多く含む食品をとることが大切です。カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚、緑黄野菜、海草などに多く含まれています。
(2)運動について
若いころ運動をしなかった人や、長い間病気で寝込みがちだった人は、体格がきゃしゃになり、骨が弱く、骨折しやすいことが知られています。骨を丈夫にするためにはカルシウムをとることが必要ですが、それと同じくらい運動が大切になります。運動は骨の血液の流れをよくし、骨をつくる細胞の働きを活発にします。また、運動によって体の筋肉がきたえられ、身のこなしがよくなると転びにくくな
り、骨折の防止にもつながります。骨を強くするための運動は、ふつうは散歩やゲートボールなどの趣味の範囲で十分です。家事で毎日こまごまと動くことでも骨を強くできます。大切なことは、毎日楽しみながら続けることです。
(3)薬物療法について
老化によって減ってしまった骨を若い頃のように戻す薬はありません。
しかし、最近では早期治療により、骨粗鬆症による骨折がかなり防げるようになりました。 現在使われている薬は、骨の吸収(骨が溶ける)を抑える薬、骨の形成(骨を作る)を助ける薬、吸収と形成の骨代謝を調節する薬の三つに大別できます。薬の種類によって飲み方が違いますので、医師や薬剤師の指示を守ってください。
次回はがんの緩和ケアについてです。1年間にわたってお話してきましたが、次回で終了の予定です。